山口瞳/著
『山口瞳 男の作法』
山口瞳/著
『山口瞳 男の作法』
風邪をひくな、転ぶな、たまには義理を欠け。
発行日
: 2022年4月23日発売
定価
: 本体1300円+税
サイズ
: 四六判並製
ページ数
: 232ページ
ISBN
: 978-4-86590-141-2
【目次】
第一章 人生、面白可笑しく
第二章 粋を学ぶ
第三章 酒を嗜む
第四章 先人の知恵を拝借
第五章 礼儀をかいたら男の恥
第六章 老いの活力
第七章 言葉は強い
第八章 歳月を考える
【内容紹介】
読者諸兄へ
「全集未収録傑作集。山口瞳はこわいぞ。文句あるか」嵐山光三郎
洒脱にして粋な味わい
「父、瞳は世界平和や男女平等を声高にいうのに、家庭内では亭主関白というような二面性を嫌っていた。人類愛よりも隣人愛のひとだった。終生、妻に対しては治子さん、僕に対しては正介さんと呼びかけ、決して呼びつけにするようなことがなかった。自分自身が丁寧な日本語を使うことが正しい言葉づかいを伝える、最良の手段だと思っていた。
そんな瞳の残した言葉の数々は、洒脱にして粋な味わいに富み、人生の色々な局面における、的確な解答になっていると思う」
山口正介 作家
人生は短い、でも焦るほど短くもない
私が会社に勤めて月給を貰うようになったころ、そのとき私は二十歳だったのですが、私の先生【注・高橋義孝/学者・作家】にあたる人と一緒に、ある会場に行くということがありました。
駅で切符を買い、改札口を通ったときに、電車がプラットフォームにはいってくるのがわかりました。
駈けだせば、その電車に乗れるのです。すこし早く歩いたとしても乗れたと思います。
周囲のひとたちは、みんな、あわてて駆けてゆきました。
しかし、先生は、ゆっくりと、いつもの歩調で歩いていました。私たちが階段を登りきってフォームに着いたとき、電車は扉ドアがしまって、発車するところでした。駅には、乗客は、先生と私と二人だけが残されたことになります。
先生は、私の気配や心持を察したようで、こんな意味のことを言いました。
「山口くん。人生というものは短いものだ。あっというまに年月が過ぎ去ってしまう。しかし、同時に、どうしてもあの電車に乗らなければならないほどには短くないよ。……それに、第一、みっともないじゃないか」
私は、この言葉に感銘を受けました。
『少年達よ、未来は』
花が美しいのではなくて、花を美しいと見る人がいるから花は美しい
「女は被写体である」
というのが私の持論である。カメラのシャッターを押すのは断じて男の役目だ。いい女とは、被写体としていい女だという意味である。
「花が美しいのではなくて、花を美しいと見る人がいるから花は美しいのだ」
という意味のことを誰かが言った。この花が女であって、見る人が男である。
しかし、どうも説明が困難になるが、女がこのようであるからこそ、男は女に関心があるのである。愛することができるのである。不可解なものを理解しようとしてドラマが生ずるのである。
『ポケットの穴』
真率という生き方
育ちの良し悪しというのは、持って生まれたものであって、当人の責任というようなことではない。私個人は、日本人の平均から考えても、相当に育ちの悪いほうの部に属する。また、育ちのいい人は良い人間であると言うつもりはない。
しかし、誰でも、育ちのいい人の身につけている良さを目ざすことはできるはずである。しからば、育ちのいい人の身につけている良さとは何であろうか。それは、私は、真率(正直で飾り気のないこと)ということだと思う。
育ちのいい人には邪念がない。裏を考えるようなところがない。相手の心のなかに、一歩踏みこんでみるような思いやりがある。相手の美点を探そうとする。
育ちの悪い人は裏を考える。怯おびえる。相手の欠点を探す。腰を引く。 私は、ずっとながいあいだ、この、真率に憧れていた。それは、私における育ちの悪さの証明になると思う。 『人生仮免許』
トリスを飲んでHAWAIIへ行こう!
「有楽町で逢いましょう」というのは、有楽町にあったデパートのそごうのキャッチ・フレーズである。キャッチ・フレーズだけが残って、そごうが消えてしまうのが、かつての宣伝部員としては情ない。「トリスを飲んでHAWAIIへ行こう!」というのは私の作ったキャッチ・フレーズであるが、商品名を残す(製品を売る)ことを考えないでいいのなら、もっと易しかった。机の下に潜りこんで苦吟したことを思いだす。工場で働く人や研究室の人や営業部員と親しくなると、自分だけが脚光を浴びるようなキャッチ・フレーズを考えることはできなくなる。余所者に何がわかるかと思っていた。私は座付作者だった。
『余計なお世話』
【著者紹介】
山口瞳(やまぐち ひとみ)
1926年東京生まれ。國學院大學文学部を卒業。出版社勤務を経て、寿屋(現サントリー)宣伝部に入り「洋酒天国」の編集、コピーライターとして活躍。
1962年『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞、1979年『血族』で菊池寛賞を受賞する。
1963年に『週刊新潮』でスタートした連載『男性自身』は、31年間1614回に及び当時のギネス記録となった。
映画の原作となった『居酒屋兆治』、『血族』の続編ともいえる『家族』、エッセイ『礼儀作法入門』は、ビジネスマンのバイブルとしてロングセラーとなっている。1995年8月永眠。
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