渡部昇一/著
『新・知的生活の方法 知の井戸を掘る』
渡部昇一/著
『新・知的生活の方法 知の井戸を掘る』
枯れない頭が運と成功をもたらす
発行日
: 2023年6月15日発売
定価
: 本体1400円+税
サイズ
: 四六判並製
ページ数
: 248ページ
ISBN
: 978-4-86590-159-7
【内容】
知の巨人が説く「考える力」を継続する習慣
心の底から自分の夢を信じ実現させる
枯れない頭が運と成功をもたらす
深井戸が一つ、そしてそれに関連性の高い井戸をもう一つ掘る。
それは、浅井戸でもかまわない。
渡部昇一
チャールズ・ダーウィンは、「人間にとって重要なのは、頭のよさよりも心の態度である」と言ったという。つまり、価値ある人生を送るために本当に必要なのは、学問の世界で言う頭のよさではなく、真剣にものを考え一事専心する態度であると言いたかったのだろう。そのダーウィンであるが、小さい時は勉強ができなくて、才気煥発で賢い妹のほうが息子だったらよかったのに、と親から言われて育ったという。しかし、ダーウィンは自分が興味を持ったことは納得するまで追究するというねばり強さを持っていた。そして、最終的には、あの生物の進化思想と自然淘汰説を明らかにした『種の起源』という、たいへんな学問的成果を残したのである。これは、それまでの人間の価値観を覆すほどの偉大な業績であった。
この話を、私は旧制中学時代に恩師の佐藤順太先生からうかがったのだが、その後の人生を考えていく時にたいへん参考になったことは言うまでもない。なるほど、いわゆる「カミソリのような頭」ではなくても、深い興味と探求心、自分の人生で一番大事なことを見極める力さえあれば、歴史的な業績をおさめることも不可能ではない―そんな希望を私に与えてくれたのである。
この話に深い感銘を受けたこともあって、私は学生時代をとおして、先生方や書物の中から、なるべく多くの教訓を得ようと心がけた。それは、言葉を換えれば自分の本当にやりたいことは何か、どんな人生を送りたいのかということを、真剣に考えていた、とも言えるだろう。
そして、自分の好きなことをして身を立てていくのが夢であり、究極の幸せであり、そのためにこそ自分は生きているのだ、という確信を抱くようになった。(略)
現在は、自分の好きな道を誰もが自由に選べる時代である。可能性は無限にあると言ってもよい。だから、自分の関心を広く豊かに持ち続け、自分の心の声に耳を澄まし、きちんとものを考えながら生きてほしい。
心の底から自分の夢の実現を願い、常にそのことを考え続けていれば、それがいつどういう形で相乗効果を起こすかもしれないからである。(略)
不幸なことに、どうしても今の日本では、何をやりたいかという夢や希望が、子供の時から抑えられてしまいがちだ。そして、幼稚園、小中学校はどこがいい、高校、大学はどこがいい、と親が勝手に決めてしまう傾向が強い。
子供たちは親や先生など外側の声ばかりに押されて、自分の本当の声を聞かない癖がついている。本来、小さい子供というのは、あんな人になりたい、こんな人になりたいと、自分の心の底でつぶやくような声を持っていたはずである。
そして、この声こそ志の基調となる。しかし、ほかのコースを選べという外側の声が大き過ぎて聞こえなくなってしまうのか、いつの間にか声が出なくなってしまう。
しかし、エリートコースに漫然と乗っていればよい時代は過ぎ去りつつある。これからの社会は、自分の志を立てるよりほかに仕方がないんだと悟った人は、時々静かな時間を持って、自分の本音に耳を傾ける習慣をつけたらいい。
これはわざわざ何時間も取る必要はなくて、出勤や散歩の途中でもかまわない。そのうちにかすかなつぶやきが聞こえるだろう。最初はその声音は低くても、次第にはっきりと聞こえてくるはずだ。
本文より
【目次】
まえがき 渡部昇一
1 こんな知的刺激が後々まで「ものを言う」
2「師」に何を学ぶか、「ライバル」とどう磨き合うか
3「考える力」が必然的につく読書法
4 知的生活の「環境」をどうつくるか
5 よく生きるために不可欠な「運」の呼び込み方
6 着実に成果を上げている人≠フ時間活用術
7 情報を生かす人、情報を生かせない人
8 頭脳鍛練の基本――記憶力・発想力を育てる
9 自分の夢と現実をイコールで結ぶ生き方
10 測れる知力と測れない知力について
11 知的生活と経済基盤――目先の煙に巻かれない生き方
【著者紹介】
渡部昇一(わたなべ・しょういち)
1930年10月15日、山形県生まれ。上智大学大学院修士課程修了。ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。Dr.phil.(1958)、Dr.Phil.h.c(1994)。上智大学教授を経て、上智大学名誉教授。その間、フルブライト教授としてアメリカの4州6大学で講義。専門の英語学のみならず幅広い評論活動を展開する。1976年第24回エッセイストクラブ賞受賞。1985年第1回正論大賞受賞。英語学・言語学に関する専門書のほかに『知的生活の方法』(講談社現代新書)、『古事記と日本人』(祥伝社)、『渡部昇一「日本の歴史」(全8巻)』(ワック)、『知的余生の方法』(新潮新書)、『[増補]決定版・日本史』(育鵬社)、『決定版 日本人論』『人生の手引書』『魂は、あるか?』『終生 知的生活の方法』(いずれも扶桑社新書)などがある。2017年4月17日逝去。享年86。
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