遠藤周作/著
『沈黙の声』
遠藤周作/著
『沈黙の声』
遠藤周作ファン待望の書!新装版。
発行日
: 2017年11月17日発売
定価
: 本体1200円+税
サイズ
: 新書判
ページ数
: 280ページ
ISBN
: 978-4-86590-055-2
【内容】
マーティン・スコセッシ監督による
映画化『沈黙―サイレンス―』も大ヒット!
200万部ベストセラー『沈黙』の創作全秘話
神よ、なぜ応えてくれないのですか?
私はその答えを『沈黙』の中で雄弁に語り尽した
神と人間の尊厳を問う問題作!
長崎で見たときにはなんでもなかった踏絵が私の心にかかりだしたのは、東京へ帰ってきてからだった。道を歩いているときや仕事をしているとき、ふと、木枠に残った黒い足の痕が胸に浮かんできた。それは一人の人間がつけたものではなく、たくさんの人間によってつけられた黒い痕にちがいなかった。
あの黒い足指の痕を残した人びとはどういう人だったのか――と誰もが考えるように、私も考えた。自分の信ずるものを自分の足で踏んだとき、いったい彼らはどういう心情だったのだろう。
私は戦争中に育った人間である。当然、自分の信念や思想を棄てて戦争のなかに死んでいかなければならなかった人間を数多く見ていた。学校の先生のなかにも、先輩のなかにもそういう人間はたくさんいた。 つまり、人間が肉体的な暴力によって自分の信念や思想をたやすく曲げていったケースを私は目のあたりにしていたのである。(略)
『沈黙』のクライマックスの場面(ロドリゴが踏絵に足をかける場面)は、あたかも誰かが助けてくれているかのように一行一行がうまく進んだのである。誰かが私の手を持って書かせてくれている感じだった。
(本文より)
【目次】
沈黙の声
日記(フェレイラの影を求めて)
父の宗教・母の宗教 マリア観音について
切支丹時代の智識人
基督の顔
ユダと小説
母なるもの
小さな町にて
解説 書き手の秘密――『沈黙』の場合 加藤宗哉
【著者紹介】
遠藤周作(えんどう しゅうさく)
一九二三年東京生まれ。慶應義塾大学仏文科卒業。十二歳でカトリックの洗礼を受ける。一九五五年『白い人』で芥川賞を受賞。日本の精神風土とキリスト教の問題をテーマにして数々の名作を執筆、また狐狸庵山人を名乗りユーモア小説や、軽妙なエッセイで女性たちの圧倒的人気を博す。 一九六六年『沈黙』により谷崎潤一郎賞を受賞。一九七〇年ローマ法王庁から勲章受章。一九九五年には文化勲章を受章。代表作に『わたしが・棄てた・女』『海と毒薬』『イエスの生涯』『侍』『深い河』また、『生きる勇気が湧いてくる本』(小社刊)などがある。一九九六年九月二十九日逝去。二〇一七年マーティン・スコセッシ監督による映画『沈黙‐サイレンス‐』が公開された。
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